まず初めに、元日に石川県能登地方で発生した「令和6年能登半島地震」につきまして、犠牲となられた方々にお悔やみを申し上げるとともに、被災されたすべての方々に心よりお見舞い申し上げます。

2023年を振り返る


2023年は「世界のスポーツ」としての姿を再び取り戻した1年となりました。11月に大阪・あべのハルカスで開催されたステアクライミング世界選手権では、アジア・欧州・米州・オセアニアから選手たちが来日。世界最高峰の緊張感の中で、渡辺良治選手吉住友里選手が見事世界チャンピオンの座を獲得しました。初の団体銅メダル獲得となったユース日本代表、欧州のワールドシリーズ戦に果敢に挑んで素晴らしい成果を残した小田切将真選手、日本の圧倒的な存在感を示せたアジア選手権日本代表。日本人選手たちの活躍は、大勢のファンに元気・勇気を与え、同時に、世界の空日本の空をつなげるものとなりました。

国内では、新たなサーキットとしてV GAMES JAPANが始まりました。これは日本の風土で培われてきた「登山競走」の文化を次世代に受け継ぐという目的があります。和太鼓の音を背に受けて、街のシンボルである神社をスタートし、街のシンボルの山頂を目指す選手たち。それぞれの山頂を目指す姿は、欧州で発展したスカイランニングが日本の文化と融合できるものであることを証明してくれました。日本独自の新たな取り組みは、それぞれの故郷の空をつなげるものとなりました。

2023年に設立10周年を迎えたJSA
初の団体銅メダルを獲得したユース日本代表

2024年とその先を読む


2024年は大きなイベントが続きます。3月にはイタリアで第2回目となるスカイスノー世界選手権、4月にはポルトガルで40歳以上のマスターズ世界選手権、6月には東欧のモンテネグロでユース世界選手権、9月にはスペインで2年に1度のスカイランニング世界選手権が開催されます。それぞれの選手権に日本代表を派遣予定であり、その活躍が期待されます。山岳ではスカイランナーワールドシリーズが、韓国・タイ・トルコといったアジア諸国で初めて開催されます。日本の近隣諸国における山岳スポーツの発展と選手交流が期待されます。これからの数年で、日本国内の競技会の国際化(特にアジア諸国)も一気に加速していくでしょう。

日本国内の課題としては、雪上(スカイスノー)階段(ステアクライミング)の2種目の成長を促進させていく必要があります。この2種目は将来の五輪種目化を見据えており、ISF(国際スカイランニング連盟)としても世界サーキット等の充実を図っていくとのことです。とりわけ、日本が出遅れているのが雪上を駆ける文化の醸成です。イタリアでは1月に冬季ワールドマスターズゲームズの正式種目としてスノーランニングを初めて実施します(イタリアのスカイランニング協会が担当)。この調子であれば2026ミラノ・コルティナ五輪でも何かしらの動きがあるではないかと期待しています。季節やフィールドを問わず多様な駆け登り文化をこの国でも発展・継承させていくこと。皆様のご協力を得ながら当協会としての役割を全力で尽くしていきます。

大阪で開催されたステアクライミング世界選手権
雪上ランはスカイランニングの原点を体現

3つの目的の達成に向けて


やる・観る・支える。それぞれの関わり方でこのスポーツを、子どもたちが夢みる「一流スポーツ」へ育てること。 子供からお年寄りまで誰もが楽しむことのできる「生涯スポーツ」へ育てること。山間部に位置する地方を活性化する「地域スポーツ」へ育てること。これがJSAを設立した最大の目的となります。

一流スポーツ
各国の組織と協同してスカイランニング競技の普及とオリンピック競技化を目指します。また、世界に挑む日本人アスリートを支援する仕組みを整えます。

生涯スポーツ
軽快登山のスタイルとして「スカイランニング」という概念を社会に広げていきます。他団体と連携しながら愛好者人口を増やし、アウトドアスポーツ業界の振興に努めていきます。

地域スポーツ
日本各地にクラブチームを結成します。サッカー界をモデルに、地域に密着したイベントや登山道整備や環境保全等の活動を行う仕組みをつくります。

この3つの目的の中で、今後、特に力を入れるべきは「地域スポーツ」という視点です。なぜなら、凄まじい勢いで過疎化が進む山間地域において、登山道の維持・環境保全が追いついていないという社会問題があるからです。日本各地、とりわけ山間地におけるスカイランニングのクラブチームの設立・発展こそが、日本が抱える社会問題を解決に導く一助となると確信しております。

そのためにも、協力者を募り、このスポーツを共に支える仲間を増やしていく事が必要となります。また、これらの活動を展開する上で、加盟団体、協力団体、スポンサー各社、ファンの支えは必須となります。2024年も我々の力を結集して目標に向けて駆け登って参ります。本協会の活動にご理解ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

クラブチームが運営を支える大会が増えつつある
安全第一で「日本」を「世界」を楽しみましょう

日本スカイランニング協会

代表理事 松本 大