【前提】多くの登山客で賑わう夏山でも、多くの危険と隣り合わせ

梅雨が明けると本格的な夏山シーズンとなります。7月~9月上旬のシーズンは、標高2000m以上の高山でも雪が無くなり(場所によっては遅くまで残っていることがあります。要注意!)、天候さえよければ快適な登山を楽しむことができます。しかし、夏は山岳遭難の危険が高まる季節であります。長距離を走れる体力があるから安全という認識は間違いです。JSTアスリートの中には山を走り始めてまだ数年という人が多いでしょうが、慣れてきた頃が一番危険に遭いやすいといわれます。基礎体力だけでなく、知識・判断力・技術力があるからこそ安全に登山ができます。「他の登山客がいるから大丈夫」という認識は危険を招きます。ぜひ以下の注意点をよく読んで安全に楽しいスカイランニング(=ランニングスタイルの登山)をしていただければと思います。

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【行動時間】「午前中の行動」が常識

夏山は毎日落雷があると思ってください。標高2000m以上の山々では14:00がタイムリミットです。早いときには12:00から雷が鳴りはじめます。稜線や山頂での行動は12:00がタイムリミットです。それ以降の行動は自殺行為となります。日帰り登山であれば10:00までには山頂に到達できるようなスケジュールで行動しましょう。朝早ければ早いほど余裕を持って行動ができます。登山では日の出前の出発は当たり前です。ヘッドライトは「日の出前に使うもの」という認識をもってください。夕方以降に使うという認識でいると確実に危険に遭うことになります。
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【登山の前に】

・家族や知り合いにスケジュールを知らせ、登山届け※を提出してください。
※「登山届 ネット」で検索するとインターネットで登山届を出せるサイトを探せます。ちなみに担当者は、山と自然ネットワーク コンパス(http://www.mt-compass.com/)を使っています。
・地図でルート(エスケープルート・地名・山小屋・水場など)を確認してください。
・ルートの距離・標高差・累積標高差を確認して何時間かかるか想定をしてください。
・想定に応じて、持ち物やタイムスケジュールを決めてください。
・その想定が、自分の力量に合っているか改めてよく考えましょう。
・自分で考えられない場合や少しでも不安がある場合は山に行かないでください。
・天候が悪い場合や天候が下り坂の場合は山に行かないでください。
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【装備】

以下の3点【3種の神器】はどんな場合でも必ず持っていてください。
①ジャケット:夏山でも低体温で死に至るケースが少なくありません。
②携帯電話:何かあったときの通信手段です。
③水&食料:非常食としてジェル等のコンパクトな食糧を携行してください。
その他に以下のものの携行を強くおススメします。
・地図 ・エマージェンシーシート ・現金 ・ヘッドライト ・コンパス

※今シーズンは例年よりも残雪が多いため、6月・7月であっても、東北・北海道地方の2000m程度の山岳、及び、中部地方の標高2500m以上の山岳では春山の装備が必要となる場合があります。高所山岳へ登山する方は、春山登山の注意点をご参照ください。

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【万が一のとき】

①落雷
尾根や山頂が危険地帯です。岩陰に隠れて身体を伏せてください。金属を外すとかは関係ありません。とにかく低い姿勢で伏せることが生き延びる可能性を高くします。
②落石
谷間や横移動の際、特に雨の後が危険です。音に注意するためにラジオや音楽は消してください。落石の音がしたら、視界の良い場所では目視をしてカニのように横移動をして直撃を避けます。視界が悪い場所や急峻な場所では岩陰に身を隠して直撃を避けます。また足元の石や岩を落とすなどの落石を起こさないこともとても大切です。
③低体温
急な雨の後に急激に気温が下がることがあります。標高3000mは下界よりも20度気温が低いです(100m上がると0.6度気温が下がります)。天候の悪い日は絶対に行動しないでください。
④滑落
ハイシーズンは登山者が込み合っており、登山道が狭くなっている場合があります。登山道を譲り合いましょう。また写真を撮るために後ずさりする行動は非常に危険です。
⑤道迷い
濃霧時に危険が高まります。ルートを見失ったらまずは引き返してください。濃霧時はむやみに動き回らないほうが得策です。ルートが見つからない場合は尾根や山頂を目指してください。谷間の方向に下ることは自殺行為です。体力的に疲れている場合はその場にとどまって救助隊を呼びましょう。ビバークする場合は風の当たらない岩陰に隠れてエマージェンシート等に包まってください。
⑥その他
夏山では毒虫・毒草の被害も頻発します。また多数の登山者が入るため盗難などの危険もあります。