1990年代に欧州で確立したスカイランニングは世界的な広がりをみせていますが、2020年代に最も普及が拡大しているのがアンデス山脈を擁する南米大陸です。世界最高峰の山岳ランニングサーキットであるMSWS(MERRELLスカイランナーワールドシリーズ)にも南米のレースが組み込まれており、6月29日に第13戦がエクアドルで、7月6日に第14戦がペルーで開催されました。驚くべきことに、両レースは世界屈指の高所スカイレースであり、4500m超の高所まで駆け登り駆け下るコース設定です。南米で開催される世界戦に現役世代を代表するスカイランナーのひとりである藤飛翔(Fuji Tsubasa)選手が”日本人として初めて”が参戦してきましたので、その挑戦をお伝えいたします。

5月に長野県で開催されたワールドシリーズ戦「上田」で2位という実力者の藤選手ですが、エクアドル大会では14位、ペルー大会では22位という結果でした。藤選手のコメントは次のとおり:
南米アンデス山脈へスカイランニング遠征に行ってきました! 私はエクアドルとペルーとで2レースに出場しましたが、いずれも徹底的に打ち負かされ、カルチャーショックを受けました。この経験は大きな財産になりそうです。というのも、これまで欧州が席巻していた時代は変わっていくのだろうと感じるほど、このようなラテンの熱量を垣間見ることができました。
・想像以上に市場が大きく、それに伴いハングリーな選手が多く、層が厚い。
・日本人に似た体格でありながら、高ピッチ、高出力で走り続ける能力が高い。
・海外での機会が少ないがため、目立っていないが、登れる選手がゴロゴロいる。
・有力選手の多くが、標高2000-4000m地帯に住んでいる。(或いは住んだ経験がある)また、山で生きることが生活の一部になっている。例えば、犬の散歩で標高3500mの丘まで走っていたり、食料品を売るために重い荷物を抱えながら街と山を行き来していたりする。
・よく食べ、よく働き、真面目で優しい人ばかり。とても活気があり、楽しそうに生きている。とても豊かに感じた。
遠征を終え思うことは、自分のコンフォートゾーンを抜け出すことの重要性と、もっと若いうちに色んな世界を見て感じておきたいということです。


6月29日にエクアドルで開催されたイバッラスカイレース(IBARRA SKYRACE®)は、距離22kmで標高差2200mを登って、同じルートを下る、シンプルなスカイレースです。目指す山頂は標高4640mのインバブラ火山であり、火口を巡る山頂部分は圧巻の眺めとなります。



7月6日にペルーで開催されたコルディッレラブランカスカイレース(CORDILLERA BLANCA SKYRACE®)は、距離23kmで標高差1450mを登り山腹の美しい湖を周回して、山麓へ下るスカイレースです。近くにはペルー最高峰のワスカラン山(標高6768 m)も聳える壮大な眺めの広がる山域となります。

日本から遠い南米のレースに参加することは、欧州やアジア各国に行く事よりもハードルが高いことですが、他の地域とは異なる南米独自の文化があり、そこで発展しているスカイランニングならではの経験が待っているでしょう。日本人スカイランナーとして初めて、南米スカイランニング参戦の歴史を切り開いた藤選手の挑戦は後世に語り継がれるべきことです。なお、スカイランニング界において、各世界選手権でも南米勢の存在感は年々増している事実があります。高所山岳の地形に恵まれた南米のスカイランニングはさらに成長していく余地があり、欧州と南米という2強が存在する、まるでサッカーのようなスポーツになっていく可能性もあります。日本をはじめアジア勢も頑張りましょう!!