10月29日にイタリアで開催された『VK OPEN Championships』の最終戦(Grèste de la Mughéra Vertical Kilometer®, Italy – 4 km / 1,094m+)。暫定ランキング2位で臨んだ吉住友里(Yoshizumi Yuri)は5位に入りました。その結果、たった2ポイント差の僅差ながらもライバルの獲得ポイントを上回り、初代世界女王となりました。また、最終戦に出場した近江竜之介(Omi Ryunosuke)は3位に入賞。単発での参戦であったためシリーズランキングには絡みませんでしたが、世界の舞台で表彰台に乗る活躍をみせました。

ガルダ湖の湖畔のリモーネの街より岩肌を駆け登る。急峻なコース設定 ©RobertoDePellegrin
吉住の駆け登り。ここは緩やかな区間(提供:吉住友里)

『VK OPEN Championships』は標高差1000mを5km以内で駆け登るスカイランニングの種目であるVK(バーティカルキロメーター)の世界的なサーキットです。中には2km未満で標高差1000mを駆け登る急峻なコース設定のレースも含まれています。2019年までSWS(スカイランナーワールドシリーズ)の運営会社によって、VKWC(VKワールドサーキット)が開催されてきましたが、それがコロナ禍の影響で休止となったため、2021年よりISF(国際スカイランニング連盟)の本部により開始された国際サーキットです。

2021 VK OPEN Championship calendar
June 5 – Parangalitsa VK, Bulgaria – 4.7 km / 960m+
July 4 – KV Sierra Nevada, Spain – 4.7 km / 1,050m+
July 16 – DoloMyths Run VK, Italy – 2.1 km / 1,000m+
August 28 – KM Vertical de Câmara de Lobos, Portugal – 3.3 km /1,000m+
September 10 – Vertical Terme di Bognanco, Italy – 3.5 km / 1,100m+
September 18 – Mamores VK, Scotland, Great Britain – 5 km / 1,000m+
October 8 – Santana Vertical Kilometer®, Portugal – 4.8 km / 1,003m+
FINAL* October 29 – Grèste de la Mughéra Vertical Kilometer®, Italy – 4 km / 1,094m+

吉住は8月より欧州に入り、ポルトガルとイタリアで開催された3戦に出場。9月のイタリア戦では2位、10月のポルトガル戦では3位に入賞するなど徐々に調子を上げ、暫定ランキング2位で最終戦を迎えました。ハイレベルなレースとなった最終戦では男子と一緒の一斉スタートのため狭い登山道では渋滞に巻き込まれるなど苦戦はしましたが、女子5位にランクイン。その結果、サーキットを転戦してきたライバルたちを抑えて初代女王の座に輝きました。

ポイントランキング:VK OPEN Championship rankings

レース結果:Race results

JSA本部に向けて寄せられた吉住の言葉を紹介します。

VK OPEN CHAMPIONSHIPSのファイナル。8/20から海外武者修行にきて、挑戦してきた集大成。昨日までの総合ポイントでは年間ランキング2位についていましたが、ファイナルは、ポイント2倍だから番狂わせもあり得ます。世界一になれる千載一遇のチャンス。何としてもなりたい!強い想いで挑みました。順位は5位で、やっぱりファイナルだけあって、強い選手ばかりでした。1位のAndrea Meyre は、数々の偉業を成し遂げている超人です。(マラソンのオリンピアンです)。それでも、自分がやってきたことは出し切りました!
年間ランキングは、集計結果出るまでドキドキでしたが、なんと、たったの2ポイント差で、チャンピオンになれましたー!本当に嬉しいです。目指していた世界一。いつもご支援応援して下さる皆様のおかげです。感謝の気持ちでいっぱいです。長いようであっという間だった海外武者修行も、無事にこれで全てのレースが終了しました。大きな怪我なく、最後までしっかりやりきれ、本当に良い経験がたくさんできました。まだまだ自分の可能性も感じれた、有意義な海外遠征でした。これからも、まだまだ頑張って上を目指していきます。引き続き、よろしくお願いいたします。

VK最終戦に挑んだ日本人3名。吉住、近江、小林(提供:吉住友里)
武者修行中!20代の日本選手団(提供:吉住友里)

このレースには、同じく海外遠征の武者修行で参戦していた近江竜之介、小林海仁(Kobayashi Kaito)の日本人スカイランナー2名が参戦していました。7月の世界選手権で9位に入る活躍をみせた近江は、強豪選手に食らい付き男子3位に入る大活躍をみせました。吉住・近江の両名は2022年9月にイタリアで開催される2022スカイランニング世界選手権の日本代表に内定しています。さらなる世界での活躍に期待です。

最終戦で女子で優勝したアンドレア・マイヤー。世界には強豪がたくさんいる ©RobertoDePellegrin

なお、ISFは快速登山をシンプルに体現する種目であるVKの価値を高めるために『VK OPEN Championship』を2022年以降も継続する方針です。2022シーズンのカレンダーの発表も楽しみにしていましょう。JSAでも、標高差1000mのVKのみならず、空に向かって駆け登る『バーティカル』の日本全国への普及活動に力を入れており、JSA公認レースだけでも23大会(非公認大会を含めれば約50大会)が日本全国で開催されています。街や村のシンボルである山岳やタワーに駆け登る。スカイランニングのムーブメントは着々と広がっています。

VK OPEN Championships(公式ページ)

VK OPEN Champions announced(ISFレポート)