本日から新年度となります。例年であれば、春の訪れと清らかな雪解けとともに、世界各地の山岳を熱狂で包むスカイランニングのシーズンが始まります。しかし、全世界でコロナウイルスの感染拡大が続いており、日本国内でも感染爆発の危険性や地域封鎖の可能性が高まっている危機的な状況といえます。既に、世界公式戦であるスカイランナーワールドシリーズについては、4~6月の大会の延期・中止と7月からの開催を発表しました。

「スポーツの灯」を灯し続けることは、世界平和を目指すスポーツを主管する立場の者として、苦境に立たされたとしても続けていかねばならないことです。今から75年ほど前、第2次世界大戦末期には日本各地で開催されてきた登山競走(スカイランニング)の開催が中止された悲しい歴史がありました。戦後の荒廃した日本や地域を元気づけるため「富士登山競走」を代表とする国内各地の歴史的なスカイランニング競技会は、平和の象徴として今日まで開催され続けてきたのです。

ただし、今回の新型コロナウイルスは、アスリートや愛好者たちはもとより、スカイランニングのイベント開催に関わる全ての人たちの健康を脅かす危険があるものです。健康あってのスポーツです。感染拡大の防止を第一に、スカイランニングに関係する団体や選手個人が、気づき、考える、行動する必要があります。そして、山岳スポーツを愛する者同士、仲間同士で助け合いながら、一致団結して危機を乗り越えていく必要があります。

自由に移動ができない状況下でも、選手の中には自宅等でも可能な練習メニューをSNSで発信する動きがみられます。また、選手たちが輝く場であるスポーツイベントの開催に向けて、考えることを諦めずに努力し続けている大会関係者、出来得る限りのサポートを惜しもうとしない支援者も、この国には存在しています。私たちは、スポーツと向き合い続けることを諦めることなく「スポーツの灯」をその胸中に灯し続ける彼・彼女らを、心よりリスペクトします。

「スポーツの灯」を灯し続けることと、新型コロナウイルスの感染拡大の防止。これを両立していくために、スカイランニングを統括するJSAとして、このスポーツに関連する個人・団体等への行動規範をここに示します。そして、JSAの事業(公式戦、総会・研修会、ナショナルチーム)に関しての具体的な対応策については来週発表します。今の危機的状況は先行きの見えない霧の中を登り続けるようなものです。しかし、登り続けていれば、雲を抜けて真っ蒼な空の下で美しい雲海を望むときが必ず来ます。今こそスカイランニングの「Less cloud.More sky」の精神が試される時です。希望を胸に、仲間と共に高みを目指していきましょう。

2020年4月1日 JSA代表理事 松本 大



行動規範 (選手・主催者等、日本国内のスカイランニングに関わる皆様へ)

まずは自らが感染しないこと、感染を拡大させないことが基本です。

感染予防のために、自らの行動を律するようにしましょう。目的地が人の少ない野外・山岳であっても、その移動途中に感染のリスクがあることをわきまえましょう。感染拡大が顕著な地域にお住いの方、感染した場合に重症化する危険がある方は、特に慎重に判断をするようにしてください。

・政府や自治体の方針には必ず従いましょう。

 政府や各自治体が出す方針は、感染症予防の専門家の意見を基に作成・発信されているものです。個人もイベント等の主催者も、個々の判断に頼らず、公的な方針を順守して感染予防に協力しましょう。感染拡大が無い地域においては、過度な自粛に縛られず、当該自治体の情報を基に活動内容を判断していきましょう。

他者を思いやった行動や発信を行いましょう。

感染拡大や移動制限については、既に地域差が生じていることを理解しましょう。感染の危険が低い個人練習やイベント等を、安易に否定・批判することはやめましょう。また、移動制限等によって屋外へ自由に出かけることのできない人たちがいることを思いやり、社会や人々を元気づける行動や発信を心がけましょう。