故郷の空が世界とつながる空になる日を目指して

―JSA(日本スカイランニング協会)の活動目的―

1895年。イギリス・スコットランド最高峰のベンネビス山で世界初の山岳レースが開催されました。麓から山頂まで駆け登る速さを競う快速登山レースでした。日本では1913年に静岡県御殿場市にて第1回目の富士登山競走が開催されました。最高峰の頂まで誰が一番早く駆け登ることができるだろうか。聳える山を見上げれば誰かしらがきっと思いつくであろう「極めてシンプルな問い」から生まれたスポーツは、各地で様々な呼ばれ方をされながら、この100年以上の間、世界で同時多発的に開催されてきました。

ただし、全世界的に共通のルールの下での国際的なスポーツとして育てようという個人や団体が生まれるのは、1980年代に『スカイランニング』ができるまで待たねばなりませんでした。現ISF(国際スカイランニング協会)の会長であるマリーノ・ジャコメッティーをはじめとするイタリア人登山家たちは、1990年代にこの種のスポーツを『スカイランニング』として名付け、それを統合するためのスポーツ組織を立ち上げました。第1回目の世界選手権が開催されたのは1998年に事になります。

それから30年余りを経て、『スカイランニング』という名称は全世界に広がることになりました。現在では世界50の国と地域にスカイランニングを統括する団体が設立され、2年に1度の世界選手権をはじめとした各種国際大会が開催されています。ISFはさらなる発展を目指しており、GAISF(国際スポーツ団体連合)への加盟を現在申請している段階であります。これが承認されれば他のスポーツに従属しない「独立したスポーツ」として国際的に認められることになり、ワールドゲームスやオリンピックへ採用される道が切り開かれることになります。

JSA(日本スカイランニング協会)はISF加盟団体として2013年に設立されました。その原動力となったのは、この魅力的なスポーツの未来を切り開く意思をもったアスリートたちでした。アスリートたちの想いを実現することを最優先にしてきたJSAは、これまで世界選手権へ日本代表選手団の派遣を4度(23歳以下のユース世界選手権への派遣は5度)行いました。2018年には国別対抗で銅メダルを獲得、2021年には上田瑠偉選手がアジア人として初めての金メダル(VK種目&複合の2種目)を獲得する快挙を成し遂げました。また、国内においては全日本選手権やジャパンシリーズ等、北海道から九州まで全国で約30の公認レースを主管しており、公式戦だけでも参加者数は1万人を超えるまでに成長しております。

空に向かって駆け登るスカイランニング。このスポーツを、子どもたちが夢みる「一流スポーツ」へ育てること。 子供からお年寄りまで誰もが楽しむことのできる「生涯スポーツ」へ育てること。山間部に位置する地方を活性化する「地域スポーツ」へ育てること。これがJSAを設立した最大の目的となります。故郷の空が世界とつながる空になる。そんな日を目指して。JSAは「Less cloud. More sky(雲上蒼天・共登至高)」のスカイランニング精神のもと、健全な普及活動に取り組んでまいります。

2022年は、JSA設立10年目となります。引き続き、仲間と共に力を合わせながら、安全第一で、空に向かって駆け登ってまいりましょう。どうぞよろしくお願い致します。

2022年1月

JSA代表 松本 大

LESS CLOUD.MORE SKY! ©Dai Matasumoto