2020年は将来のスカイランニングの姿を見据え、新たな取り組みを進めるための時間を私たちに与えてくれました。2021年のJSAは「一流スポーツ」「地域スポーツ」「生涯スポーツ」としてスカイランニングの価値を高めていく新たな取り組みに挑戦していきます。以下には、2021年に始まる新たな取り組みを「する」「みる」「ささえる」の3点から挙げていきます。


やる

スペインで開催されたSKYSNOWのレース

SKYSNOW(スカイスノー)

10月末に開催されたISF年次総会の決議により、スカイランニングの新種目「SKYSNOW(スカイスノー)」がISFルールに新たに追加されました。この新種目はマクロクランポンを装着しての雪上山岳ランニングレースであり、高所山岳の快速登山であるスカイランニングの原点スタイルを、スポーツとして一般化したもとなります。 Vertical(バーティカル)とClassic(クラシック)の2種目があり、具体的な時期は発表されていませんが2年に1度の世界選手権も計画されています。JSAでは2022年に第1回目の「全日本スカイスノー選手権大会」を計画しており、2021年4月3・4日にはテストレースとなる国内初の公認競技会を群馬県嬬恋村で開催します(リンク:TSUMAGOI SKYRUN)。

SKYSNOW(スカイスノー)– 承認されたマイクロクランポンを装着しての雪上レース(70%以上の区間)。次の2種目が定義される。
VERTICAL(バーティカル):距離5km未満、15%以上の傾斜の駆け登り
CLASSIC(クラシック):距離9km以上、3%以上の傾斜。ユースカテゴリは5km以上、標高差200m以上。

SKYSNOW(スカイスノー)の装備– マイクロクランポンの装着は必須。スカイスノー競技で許可されるマイクロクランポンには、つま先とかかとの間に10個以上の金属製スパイク(8/10mm)がついている必要がある。スパイクが組み込まれたシューズについても、10個以上の金属製スパイク(8/10mm)がついている必要がある。その他の種類のシューズ(陸上用スパイクシューズ、サッカーシューズ)、及び、山岳用のアイゼンの使用は禁止である。また、GPSトラッカーの使用を推奨する。スキーポールの使用は5.3.7に示されている通りである。

必携装備
・長袖防寒シャツ、フード付き長袖防水ジャケット、足首までの防寒ロングパンツ、手袋、帽子
・レースが昼間である場合:サングラス
・レースが夕方または夜である場合:フロントライトと後部レッドライト(予備バッテリー付き)
・サーマルブランケット
・携帯電話(十分に充電されているもの)

スカイランニング競技規則(JSA作成版・日本語)

全日本ジュニアスカイランニング選手権大会(通称:ジュニア選手権)

2021年8月7・8日。夏休み期間を利用して、小学生・中学生・高校生を対象にした「全日本ジュニアスカイランニング選手権大会」を群馬県嬬恋村(リンク:TSUMAGOI SKYRUN)で開催します。この交流大会は、全国の子どもたちが生涯を通して山岳スポーツに親しんでもらえるきっかけとなるよう願って開催するものであり、山岳スポーツに興味のある全国の子どもたちが参加できるオープンな競技会です。大会を通じて、あらゆる山岳スポーツの基本である「駆け登る」ことの基礎体力・技術力の向上、仲間づくり、マナーの涵養を図ります。

実施予定の種目
小学生:バーティカル(4km/+600m)の1種目。※低学年・中学年・高学年の年代別
中学生:バーティカル(4km/+600m)とスカイレース(9km/±700m)の2種目
高校生:バーティカル(4km/+600m)とスカイレース(16km/±1200m)の2種目

FKT(Fastest Known Time)の公認化

コロナ禍により競技会の中止が相次いだことは、アスリートたちによる最速登山記録の挑戦を促すことになりました。欧州アルプスでは4000m級の伝統的な登山ルートの最速記録がいくつも塗り替えられたシーズンとなりました(リンク:ISF公認記録)。日本においても計測アプリ等を使用して数多くの個人的な挑戦が試みられましたが、それを公認記録として集約できるスポーツ団体は存在しないままでした。JSAでは、まず最初に、国内の主要な山岳において長年積み重ねられてきたFKTの情報を収集することに着手していきます(過去の個人記録や大会記録の「参考記録」の収集となります)。2021シーズンからはJSA公認審判員にFKTのコースとその結果を承認する権利を付与し、リアルタイムでの情報発信にも挑んでいきます。

2020年10月にはJSA公認審判員立会いのもと、八ヶ岳全山縦走のFKTが長野県協会の藤飛翔選手によって樹立されました(JSA公認第1号となります)。この記録動画は12月26日に配信予定です。


みる

2020日本選手権・視聴回数は3万回を超えている

スカジャパ・サブスク

これまで「日本選手権」や「スカイランナージャパンシリーズ(SJS)」等の第1種公認レースはJSA登録選手と一般(非登録選手)が混在するオープンの競技会でしたが、JSA競技規則を変更し、2021年からは原則として、JSA登録選手の部門と一般(非登録選手)の部門を明確に分離していきます。これにより、洗練された”見応えのあるスポーツ”としてレース動画等の発信をより強化していきます。SJSにおいては、JSA登録者には「スカジャパ・サブスク」を利用できる権利を付与し、リーズブナルな参加費でサーキットを巡ることができるシステムを導入していきます。 また、クラブチーム等のランキングシステムも変更し、クラブチーム単位で現地で応援・サポートすることを楽しめる環境を整えていきます。

「日本選手権」及び「スカイランナージャパンシリーズ」のカレンダーは2021年1月に発表します

スカジャパ・YouTuberシリーズ

これはクリエイティブなスカイランナーとともに、このスポーツがエンターテイメントとして成長するための取り組みです。スカイランナージャパンシリーズ(SJS)はVKとSKY、それぞれ5戦での開催を予定しています。その魅力発信の一環として「スカジャパ・YouTuberシリーズ 」というYouTuber部門を設ける予定です。これはSJS主催者(合同会社スカイランニングジャパン)が山岳系・ランニング系のユーチューバ―を大会に招待し、ユーチューバ―はそれぞれの目線でのYouTube番組を制作・配信します。配信された動画はJSAや各大会のSNSでも共有され、多くのスカイランニング・ファンが視聴します。シリーズ年間で最も「高評価」を得たユーチューバ―にはSJS主催者より褒賞が贈呈されます。

対象となるユーチューバ―は事前登録制となります。詳細は「スカイランナージャパンシリーズ」のカレンダーと共に発表いたします


ささえる

長野県スカイランニング協会によって開催された「鹿島槍スーパーバーティカル」

都道府県(地域)協会の設立・地域シリーズ

2020年は長野県スカイランニング協会が設立されたことで、初の地域シリーズである「長野シリーズ」が開催された年となりました。JSAでは加盟する都道府県(地域)協会の設立を促進し、都道府県(地域)単位でスポーツをマネージメントする仕組みを整えています。会員は、JSAに加盟する都道府県(地域)協会へ会員登録することで、JSAにも自動的に登録することになります。また、都道府県(地域)協会は独自に財源を確保し、独自の事業をそれぞれのエリアで展開することができます。この地域単位のコミュニティーや事業の活性化が、各地域の選手たちの活動を支えることにつながります。都道府県協会の活動の具現化のために、JSAでは関連する規程が定めています。都道府県協会の関係者の皆さんはぜひご確認ください。

都道府県協会設立に関する規定  ➡ 都道府県(地域)協会の設立の手順・方法が定められています
※2020JSA総会にて承認

加盟団体規程  ➡ 都道府県(地域)協会等がJSAに加盟するための条件について定められています
※改定版:令和3年1月1日より施行

会員に関する規程  ➡ 都道府県(地域)協会のJSA加盟料はこの規程により定められています
※改訂版:令和3年1月1日より施行(旧:入会及び退会に関する規程)

公認競技会規程  ➡ 都道府県(地域)協会が公式戦を主管するための要項となります
※新規程:令和3年1月1日より施行

地域マネージャー・地域選手権

都道府県協会の設立の道筋が成立したため、JSAでは都道府県マネージャー(都道府県単位の役員)を廃止します。一方、JSA本部役員としての地域マネージャー(全国9地域(北海道・東北・関東・北信越・東海・近畿・中国・四国・九州)単位の役員)を再指名し、それぞれの地域における地域選手権の運営強化を進めていきます。地域選手権は、スカイランニングの競技規則を各地域に普及するための「柱」となる取り組みであり、VKとSKYの2種目の実施が認められます。

加盟団体規程に定められている通り、地域マネージャーは正式には「地域連絡協議会」を構成するメンバーとなります。地域マネージャーは、それぞれの地域の加盟団体の役員よりJSA代表理事が任命します

公認審判員・指導員

公正公平かつ安全性の高いスポーツづくりを目指していくため、2020年度よりJSA独自の公認審判員・指導員のシステムが始動しました。2021年2月には、コロナ禍に対応し「WEB形式」での講習会及び検定試験の実施を予定しています。また、それぞれの規程を整備することで、審判員と指導員のシステムがスカイランニングの健全な普及に効果的につながるようにしていきます。

公認審判員・指導員は2年に1度の更新制となります。2021年2月の講習会及び検定については1月に案内いたします

他団体との連絡協議・重複の解消

スカイランニングの将来を見据えて、ISF(国際スカイランニング連盟)は、GAISF( Grobal Association of International Sports Federations/国際スポーツ団体連合)への加入を目指す方針を固めました。GAISFはIOC(国際オリンピック委員会)が承認する世界最大のスポーツ組織であり、GAISF加盟団体であることは、事実上IOC承認団体になるための基礎条件になっています。それに伴い、ISFはスカイランニング競技に特性が類似(重複)する他団体が主管する競技との整理を進めていく方針です。JSAでも他団体との連絡協議を進め、高所山岳を駆け登る「快速登山」がその原点であるスカイランニング固有の価値を高め、日本スポーツ協会及びJOCへの本協会の加盟を実現していく方針です。

100年前より世界で自然発生的に催されていた山岳ランニングを「スカイランニング」と名付け、国際競技規則に基づく世界的なスポーツへと価値を高めてきたのが、ISF(国際スカイランニング連盟)です。近年はその競技規則と重複する内容で、スカイランニングとは別の名称(類似する名称)を名乗る競技団体が世界で乱立している状況です。スポーツやアスリートたちの価値を高めるためにも、競技規則の重複を解消することが求められています。