2016Salomonスカイランナー・ジャパン・シリーズ(通称“SJS”)は日本各地でハイレベルなアスリートたちの熱戦が繰り広げられました。また、スカイランニングを愛する“快速登山者”たちも大勢が参加しました。1913年の富士登山競走から始まった日本のスカイランニングの歴史がまたひとつ積み重ねられました。多くのドラマがあり、子供たちが憧れるヒーロー・ヒロインが誕生しました。しかし、今までのレポートでは素晴らしい成績を残した全員を紹介できたわけではありません。実は、シリーズ戦だからこそ浮き出てくるヒーロー・ヒロインたちの姿がランキングには隠されています。ここでは主観を入れずに統計に注目しながら、2016SJSを振り返り、私達のヒーロー・ヒロインを探してしてみましょう。
まず、2016SJSに参加したのは日本在住の山岳ランナーだけではありません。観光の一環として来日してきた韓国・香港・アメリカ・イギリス等の海外在住の選手の姿もみられました。ジャパンカップも全て合わせると参加者の合計は延べ7541名。高校生以下を対象としたジュニアシリーズでは延べ431名が参加しました。総距離は249.6km。獲得標高差は21450m。シリーズ戦はひとつの長い長いレースでもあります。
都道府県ランキング。SKYシリーズでもVERTICALシリーズでも、大活躍したのは東京都、次に神奈川県。豊富な人口・人材抱える“2強”ですが、首都圏の大学に通うユース世代の活躍も大躍進の原動力といえるでしょう。バーティカルでは富士山で日々鍛えている自衛隊チームのシリーズ本格参戦があり静岡県が2位。また、ポイントを人口比で割ると、群馬県と長野県が圧倒的なトップ2に躍り出ます。2016NHK大河ドラマにもなった真田家の配下でもあったこの2県は忍者修業も可能なほど山岳に恵まれたエリア。ジュニアシリーズの中心地でもあり、日本のスカイランニングを牽引してくエリアへとなる勢いがあります。なお、北は北海道、南は鹿児島まで、全部で34都道府県がシリーズポイントを獲得しました。
2016 SKYシリーズ 個人ランキング 都道府県ランキング
2016 VERTICAL シリーズ 個人ランキング 都道府県ランキング
個人ランキング。ウィナービブを獲得したのは(枚数順、あいうえお順に)男子は、宮原徹(Toru Miyahara/4枚)、上田瑠偉(Ruy Ueda/2枚)、松本翔(Sho Matsumoto/2枚)、小川壮太(Sota Ogawa)、近藤敬仁(Yoshihito Kondo)、永里剛城(Goki Nagasato)、渡辺良治(Ryoji Watanabe)。女子は、星野由香理(Yukari Hoshino/3枚)、吉住友里(Yuri Yoshizumi/3枚)、高村貴子(Takako Takamura/2枚)、浅原かおり(Kaori Asahara)、スティービー・クレーマー(Stevie・Kremer)、渡部春雅(Kasuga Watabe)。全てのスカイランナーから称えられるべき真のトップアスリートたちです。詳しくは今までのレポートをご覧ください。
ここからは今までのレポートでは掲載されなかった私達のヒーロー・ヒロインの出番です。まずは、シリーズ戦(全5戦)の全てでポイントを獲得した偉大なスカイランナー6名を紹介しましょう。SKYシリーズでは山本大賀(Taiga Yamamoto/186.4ポイント)と西山達也(Tatsuya Nishiyama/130.8ポイント)の2名が、総距離145km、獲得標高差10550mを一度も立ち止まることなく最後まで全力で駆け抜けました。5月21日の経ヶ岳のスタートから10月23日の西米良のゴールまで。5か月に渡るロングレースのトップ2です。VERTICALシリーズでは、渡辺良治(Ryoji Watanabe/274.4ポイント)、浦野正紀(Masanori Urano/144ポイント)、岩楯志帆(Shiho Iwadate/235.2ポイント)、須藤吉仕子(Kishiko Suto/225.6ポイント)、合計4名が、獲得標高差4800m(モンブランとほぼ同じ標高差)を全力で駆け登りました。なお、渡辺と岩楯は12月11日に大阪市で開催されたハルカススカイラン(標高差300m)にも出場しているため、これを含めると標高差5000m以上を駆け登ったことになります。
岩楯と須藤の素晴らしい結果はまだあります。2名は共にSKYシリーズも3戦でポイントを獲得しました。合計8レースでシリーズポイントを獲得したことになります。SKYとVERTICALシリーズ、全ポイントの合計では、SKYシリーズでチャンピオンとなった星野由香理(Yukari Hoshino)が476ポイントで1位。岩楯は443.2ポイントで2位、須藤は409.6ポイントで3位となりました。ハイレベルな熱戦が繰り広げられた男子では、藤飛翔(Tsubasa Fuji)が399.2ポイントで1位、SKYシリーズ王者の牛田美樹(Miki Ushida)が393.6ポイントで2位、秋元佑介(Yusuke Akimoto)が380ポイントで3位となりました。
今回は統計でみつけたヒーロ・ヒロインを紹介してみました。しかし、この統計には出ていないドラマがあり、素晴らしいスカイランナーたちがいたことでしょう。反省点もあります。2016SJSのランキングには年代別のカテゴリがありませんでした。年代別のデータが加わることで、このランキングはより深みのある統計になることでしょう。この課題を克服するために2017SJSでは40代・50代・60代を対象にした“マスターズシリーズ”の新設を計画しております。
7541名全員が下山できたことこそ、スカイランニングという山岳スポーツにとって最も大切であり、全員を称えるべきことであります。2016SJSに関わった全ての方々に御礼申し上げます。最後に、このシリーズを支えてくださったJSAプレミアムパートナーのSalomon様、そして、ランキング作成を担当した細田高裕(Takashiro Hosoda)さんに心より感謝申し上げます。
2017SJSカレンダーは1月中旬に発表予定です。来年も“空と地球が出会う場所”を駆け抜けてみましょう。Less cloud.More sky