2017Salomonスカイランナージャパンシリーズ(通称“SJS”)も日本各地でスカイランナーたちの熱戦が繰り広げられました。また、スカイランニングを愛する“快速登山者”たちも大勢が参加しました。1913年の富士登山競走から始まった日本におけるスカイランニングの歴史が、またひとつ積み重ねられました。多くのドラマがあり、若者たちが憧れるヒーロー・ヒロインが誕生しました。しかし、今までのレポートでは素晴らしい成績を残した全員を紹介できたわけではありません。実は、シリーズ戦だからこそ浮き出てくるヒーロー・ヒロインたちの姿がランキングには隠されています。ここでは主観を入れずに統計に注目しながら、2017SJSを振り返ってみましょう。
まず、2017SJSに参加したのは日本在住のスカイランナーだけではありません。アジア選手権の蔵王スカイランニングをはじめ、スカイランニングのために来日した海外在住の選手の姿もみられました。ジャパンカップも全て合わせると参加者の合計は延べ8551名。高校生以下を対象としたジュニアシリーズでは延べ534名が参加しました。総距離は285.9km。獲得標高差は25050m。シリーズ戦はひとつの長い長いレースでもあります。
都道府県ランキング。全7戦で実施されたVERTICALシリーズでは長野県が大きく抜き出ました。これは高社や野沢などの長野県内のレースがシリーズに新たに加わり、冬季はスキー競技に打ち込む選手が大勢参加した影響も大きいと考えられます。2位は東京都、3位は群馬県、4位は静岡県、5位は神奈川県、と例年通りの‶5強”が揃う形となりました。静岡県はポイント獲得者合計9名の少数精鋭で大きなポイントを獲得していますが、これは宮原徹(Toru Miayahara)をはじめとした滝ヶ原自衛隊のメンバーひとりあたりの獲得ポイントが大きいためといえます。
SKYCLASSICシリーズの都道府県ランキング。全4戦が実施された、ハイレベルなレースが繰り広げられた中、愛知県が大躍進して初めてトップとなりました(愛知県は2016シーズンは全体で7位)。シリーズチャンピオンに輝いた加藤聡(Satoshi Kato)を筆頭に、合計19名がポイントを獲得。SKY王国へと一気に躍り出た形になります。2位は東京都、3位は神奈川県、4位は群馬県、5位は長野県と常連がランクインしました。6位には昨年の9位から躍進した京都府が入りました。今後の東海・近畿勢の躍進が期待されます。
個人ランキング。ウィナービブを獲得したのは、吉住友里(Yuri Yoshizumi)がバーティカル全レースとなる7枚、宮原徹(Toru Miayahara)が5枚、高村貴子(Takako Takamura)が3枚、上田瑠偉(Ruy Ueda)と加藤聡(Satoshi Kato)が2枚、近藤敬仁(Yoshihito Kondo)とジョセフ・グレイ(Joseph Gray)と長坂恵子(Keiko Nagasaka)が1枚となります。この中でVERTICALとSKYCLASSICの両方でウィナービブを獲得したのは上田瑠偉のひとり。また、ジョセフ・グレイによってウィナービブが初めて海を渡ることになりました。全てのスカイランナーから称えられるべき真のトップアスリートたちです。詳しくは今までのレポートをご覧ください。
ここからはシリーズを通してのヒーロー・ヒロインの出番です。まず紹介するべきなのは、2017スカイランナージャパンシリーズの全11戦でポイントを獲得した須藤吉仕子(Kishiko Suto)です。須藤は60代マスターズの王者でもあり、バーティカルシリーズでは総合3位となりました。淡々と空に向かって駆け登る須藤の姿に多くの者が勇気をもらいました。須藤は5月の上田バーティカルから10月の尾瀬岩鞍VKまで、標高差18150mを全力で駆け登りました。須藤の挑戦は、今の時代に生きる我々が語り継ぐべき快挙であるといえます。
VERTICALシリーズで7戦中4戦以上でポイントを獲得した選手は、合計で20名となります。全7戦でのポイント獲得は須藤吉仕子と吉住友里の2名に加えて、男子では今井洋二(Yoji Imai)が快挙を達成。6戦は宮原徹、吉野大和(Yamato Yoshino)、鈴木龍弥(Ryuya Suzuki)、浦野正紀(Masanori Urano)の4名。5戦は滝澤空良(Sora Takizawa)、藤飛翔(Tsubasa Fuji)、近江竜之介(Ryunosuke Oumi)、田中耕造(Kozo Tanaka)の4名。4戦は高村まゆみ(Mayumi Takamura)、ルブラス恵美里(Emiri Lebras)、永里剛城(Goki Nagasato)、新牛込崇史(Takashi Shinushigome)、宮川朋史(Tomofumi Miyagawa)、八田康裕(Yasuhiro Hatta)、涌嶋優(Suguru Wakushima)、ルブラス・エルワン(Erwan Lebras)、遠藤健太(Kenta Endo)の9名。ルブラス恵美里とエルワンは親子での達成となります。
SKYCLASSICシリーズでは4戦中3戦のポイントを獲得した選手は14名となります。全4戦は男子でチャンピオンとなった加藤聡、桑原絵里(Eri Kuwahara)、早川由香里(Yukari Hayakawa)、須藤吉仕子の4名。3戦は女子のチャンピオンである高村貴子、折戸小百合(Sayuri Orito)、近藤敬仁(Yoshihito Kondo)、吉野大和(Yamato Yoshino)、吉田岳生(Takeo Yoshida)、工藤祐輔(Yusuke Kudo)、小山真一(Shinichi Koyama)、安田隼人(Hayato Yasuda)、秋元佑介(Yusuke Akimoto)、西山達也(Tatsuya Nishiyama)の10名。なお、吉野大和はVERTICALとSKYCLASSICの合わせて9戦でポイントを獲得。選手層の厚い男子の中で合計643.6ポイントを獲得したのは大いに讃えるべき快挙といえます。
2017年から始まった年代別のマスターズシリーズでは、40代・50代・60代の世代がそれぞれの高みを目指して切磋琢磨する姿が見られました。来年は10・20代、30代の年代別部門も設ける予定です。スカイランナージャパンシリーズが各地で努力を重ねるアスリートの励みになればと考えております。
今年の反省点としては、レースの開催場所によって地域的なハンデが大きいということです。特に、西日本と北日本のエリアはシリーズ戦が無い状況でした。その様な中でも、鹿児島の永里剛城、北海道の高村貴子と滝澤空良の3名は、シリーズランキングトップ3に入る快挙を成し遂げました。運営側として彼・彼女らには感謝の気持ちでいっぱいです。JSAとしては2018年より段階的に地域選手権や地域シリーズ戦の開催を拡充していく予定であります。また、JSA公認クラブチームによるチームランキングの導入も予定しています。各地域の組織体制が整ってはじめて、世界共通ルールのもとで各地域が光り輝く「真のスポーツ」が実現します。アスリートの育成だけでなく、各地でスポーツを担っていく運営側の育成こそ、スカイランニングの発展のために今後はますます必要となってくるといえます。
様々な課題はあるものの、2017年のシリーズにおいて、頂を目指した8551名全員が無事下山できたことこそ、スカイランニングという山岳スポーツにとって最も大切であり、全員を称えるべきことであります。2017SJSに関わった全ての方々に御礼申し上げます。最後に、このシリーズを支えてくださったJSAプレミアムパートナーのSalomon様、そして、ランキング作成を担当した細田高裕さん、ルブラスエルワンさん、相良孔太さんに心より感謝申し上げます。
2018SJSカレンダーは1月中旬に発表予定です。来年も空に向かって駆け登り、どんよりとした雲を突き抜け、皆さんで共に光り輝いていきましょう!LESS CLOUD.MORE SKY!