10月6日(土)にブルガリアのバンスコで開催されたワールドシリーズ(EXTRAシリーズ)最終戦「ピリン ウルトラ(Pirin Ultra)」で星野由香理(Yukari Hoshino)が女子7位に入る快挙を達成しました。この結果、6月のマデイラから今回のピリンまで、合計4つの世界戦を巡ってきた星野は全レースでポイントを獲得し2018年間ランキング19位(2018Ranking)という足跡を残しました。日本人の女性スカイランナーとしては初のチャレンジとなった星野の今シーズンの戦いは日本の山岳ランニング史に残る偉業といえるでしょう。以下では今シーズンに星野が出場した世界戦と結果、そして、最終戦ピリン・ウルトラを紹介します。
JUN2:ULTRA SKYMARATHON® MADEIRA 56km/±4100m
6月2日 ウルトラ スカイマラソン マデイラ(ポルトガル)
ポイントが5割増のボーナスレースにもなった超ハイレベルな戦いの中、星野は18位。
JUL7:HIGH TRAIL VANOISE 70km/±5400m
7月7日 ハイ トレイル ヴェノワーズ(フランス)
雪上の高所山岳レースで星野は9位とトップ10に食い込む。
星野由香理が雪上の世界シリーズ戦で9位―ハイトレイル・ヴェノワーズ―
SEP29:SALOMON ULTRA PIRINEU 110km/±6800m
9月29日 サロモン ウルトラ ピレネー(スペイン)
最長距離の世界戦。2週間前の世界選手権の疲れもある中、星野は13位にランクイン。
OCT6:PIRIN ULTRA 66km/±4400m
10月6日 ピリン ウルトラ(ブルガリア)
シリーズランキングが決まる世界最終戦において、星野は今期最高の7位に入る。
星野由香理「Pirin Ultra」レポート全文
Skyrunner World Series 最終戦、ブルガリアのバンスコという町で開催された「Pirin Ultra」に参戦してきました。舞台はピリン国立公園。岩肌がむき出しの荒々しい山は、その山々自体がひとつの大きな大理石からできているという、とても珍しい山。コース上にも、スクランブリングはないにしても、ゴロゴロとした岩の急登や下り箇所がいくつかありました。
EXTRAシリーズ最終戦ということもあって、ピリンウルトラには、ランキング上位選手も多数参戦してきました。世界ランキングをかけた戦いが、まさにこのピリンで行われました。私も今年初参戦したワールドシリーズ戦のラスト、後悔の無いように全て出し切る覚悟でこのレースに臨みました。
スタートしてからはとにかくトップ10をキープする位置で前に食らいついていきましたが、やはり先週のウルトラピレネーの疲れがあるのか、15kmぐらいで体の動きが悪くなってきました。このままじゃすぐにトップ10から落ちてしまう、と、もがき続ける苦しい時間帯でしたが、30kmぐらいを過ぎるとまた徐々に体が動き始めてきました。そこからはひとつでも順位を上げる、その気持ちで前を追っていきました。「もうこれで終わり。全て出し切れ!」そう自分に言い聞かせながら。そして、ラストのピークへの登りで女子選手を一人パスし、さらに上位選手たちのリタイアもあり、7位でフィニッシュラインを踏むことができました。家族の待つフィニッシュラインに。
このゴールは、ピリンウルトラのゴールであり、ワールドシリーズ戦のゴール。6月のマデイラから始まって、このピリンのゴールに辿り着くことを思い描きながら駆け抜けてきました。ピリンのゴールの瞬間は達成感あり、嬉しさあり、そして、これで終わってしまう寂しさもありました。ワールドシリーズ戦への挑戦、本当に素晴らしい挑戦でした。キツさも苦しさも喜びも、全て味わい尽くしました。
応援してくださった皆さん、見守ってくださった皆さん、サポートしてくださった皆さん、本当にありがとうございました。
Yukari Hoshino:2018 Skyrunner® World Series 302km/±20700m
ワールドシリーズ戦はひとつの長い長いレースです。スタート地点に立つことができるのはトップアスリートだけでありません。情熱と努力さえあれば、誰もが挑む機会を得ることのできる世界最高峰の壮大な山岳への挑戦です。そこに、ひとりで挑み続け、最後は家族が待つゴールへと「無事下山」を達成した星野の足跡。これは未来のスカイランナーたちが世界の頂を目指す際の道標となることでしょう。